シロクマとペンギン

主に読んだ本の備忘録です。

『カンガルー日和』

 村上春樹カンガルー日和』(講談社文庫 1986年)を読みました。
 村上春樹氏の短編集です。表題作である「カンガルー日和」、「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」、「眠い」、「あしか祭り」、「鏡」、「スパゲティーの年に」、「かいつぶり」、「図書館奇譚」などの短編が十八、収録されています。

 この本は高校生の時に出会い、もう何回も読んでいる本です。一回目なので何か思い入れの本を・・・と思い、この本を選びました。備忘録のために書いているのに、何だか趣旨がズレているような気がしないでもないですが、とにかく高校生の僕が村上春樹氏にのめり込むキッカケになった本です。

 表題作である「カンガルー日和」は日常を繊細に切り取った短編であったり、「あしか祭り」や「かいつぶり」は、まさしくハルキワールドといった感じで、独特"すぎる"世界観が流れていたり、「4月のある~」は短編として本当に惚れ惚れする作品であったり、「図書館奇譚」は少し怖いながらも羊男が愛おしかったり、『カンガルー日和』は、とにかく凄い短編集だと改めて思いました。ハルキワールドがこの一冊に凝縮されているといっても過言ではないと思います。しかし、そのハルキワールドを言葉にしようと思うと非常に難しいといいますか、皆さんの感性で受け取って下さい、としか言いようがないです。いやはや、本当に難しいんです。
 また、佐々木マキ氏のイラストも、村上春樹氏の短編に良く似合っているといいますか、『羊をめぐる冒険』においても、佐々木マキ氏のイラストが表紙を飾っているので、星新一氏の真鍋博氏、和田誠氏みたいなコンビだと勝手に思っています。
 あと、『ボクらの時代』で森見氏と万城目氏と上田氏の対談において、万城目氏が「村上春樹を読んだ後は思わずバーなどを出してしまうから、それ以後、読んでいない」と言っていた(恐らくこんなニュアンスで言っていました)のを見て、確かに読んだ後、喋り方だったり、文章を書く時でも似てしまうよなあ、という事をボンヤリと思いながら見ていました。恐るべしです。

 まあ、僕は『カンガルー日和』を読み返している場合では無いんです。家に積んである『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』や、『騎士団長殺し』などを読まないといけないんです。それでも、思わず開いてしまったら、あれよあれよという内に読んでしまう本、それが『カンガルー日和』だと思います。未読の方は是非読んでみて下さい。

 最後に、「スパゲティーの年」から引用して終わりたいと思います。

 デュラム・セモリナ。

 イタリアの平野に育った黄金色の麦。

 一九七一年に自分たちが輸出していたものが「孤独」だったと知ったら、イタリア人たちは恐らく仰天したことだろう。(村上、1986、P172)

 こんな文章を一度は僕も書いてみたいものです、とか、何度生まれ変わっても出来ないだろうことを言ってみます。読めるだけで幸せ者だと思っておきます。

――読書記録(1)村上春樹カンガルー日和』(講談社文庫 1986年)――

カンガルー日和 (講談社文庫)

カンガルー日和 (講談社文庫)

 

 

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)